航空機用潤滑油について長々と書き連ねたが読みにくいので、新たに書き始める。

 「三菱鉱業社史」
   昭和51年発行  より

 三菱鉱業研究所において、最初は低温乾溜によるコールタールを原料として、高圧水素添加によって揮発油と同時に潤滑油をも製造しようと試みた。優秀な触媒も発見し、特許も得ていたが、出発した原料の関係もあって航空機用のような最高級の潤滑油は得難いと考え、パラフィン属のもの、あるいは将来期待せられるフィッシャー法による合成物を1度接触分解し、これを更に重合する方法に方向を転換した。実験室的には相当の成績を収めたが、のち戦局の発展に伴い、原料を植物油、主として椰子油に変更せざるを得なかった。これを脱水重合後水素添加を行って目的を達しようとしたのである。
 しかし一部の性質に充分でないところがあって研究を続けていたが、昭和19年に至り、主たる研究員が三菱化成工業黒崎工場の植物油より生成する合成潤滑油工場の創設に協力することとなり、約1か年も同工場に出張することとなって、中絶のやむなきに至った。