久しぶりに面白い本を古本屋で買い求めることが出来た。
「日露戦役従軍略記 中澤一太郎」 編著者 楠 祐次
1996年11月15日発行 非売品
この本は、日露戦争に輜重輸卒(しちょうゆそつ、輜重兵ではない。)として従軍された中澤一太郎氏の日記を、楠祐次氏が解説し、読みやすくし、子息である中澤敬止氏が出版したものである。
この日記で特に興味深いのは、食に関連する記述が多いことだ。日露戦争で具体的に兵士が何が食べていたのか、ほとんどの方が目にした事がないと思うのだが、実際に糧食を運搬し、その内容を書きとめ、日々の食事の内容、供給量、加給品としての菓子などが一部分るこの日記は非常に貴重だ。
「醤油エキス」これは醤油を濃縮したものらしいのだが、運搬した品物の中でかなりの頻度で登場する。どうも戦地では「醤油」ではなく「醤油エキス」が圧倒的に使われていたらしい。アジア歴史資料センターの日露戦争当時の糧食供給の資料を見ても、ほとんど「醤油エキス」と書かれている。「醤油エキス」の作り方に興味を持ち、戦前、戦後の醤油製造の本を五冊程読んでみたが、その記述はなく、野田醤油(現在のキッコーマン)の社史にも何も書いていなかった。ところが、アジア歴史資料センターの
「要塞予備糧秣其他購入貯蔵ノ件」(明治36年12月)
を見ると、至急、醤油エキス製造器械一式を購入し、陸軍糧秣廠に貯蔵とある。おそらく、民間で醸造されていた醤油を陸軍糧秣廠で加工し「醤油エキス」を製造していたのであろう。
なお、面白いのであと数回はこの本に関連した事を書きたいと思う。
本日、44回目の誕生日を迎えたのだが、相変わらず書いていることは愚にも付かない上、菜摘ひかる女史の著作を読み、仕事に対するプロ意識の欠如を痛感させられている。