「 戦時下の『食糧と体位』」
井上兼雄 高志書房 昭和18年7月10日
身近にある社史も殆ど借り尽くしたので(田舎なのでたいした量があ
るわけでもないのですが)このような本を開いてみました。中に「兵隊
と栄養」という一章がありました。前に、ビタミンB1の話を書きまし
たので何か関連する面白い話が書いていないかと読んでみたのです。
日華事変初期にごく一部ですがビタミンB1の欠乏により、脚気が発
生しました。陸軍が支給した主食は「七分搗き米」7割と「大麦」3割
を混ぜたものでした。本来なら脚気などにはならないはずなのですが、
後予備役の会社員や金持ちの子供の混じっている部隊だったようで、
「明日をも知れぬ命、不味い物は食べたくない。」ということで、米を
飯盒に入れてゴシゴシ洗い、胚芽や糠は綺麗に洗い落とし、浮かんでき
た麦は捨ててしまい、脚気を発症させたようです。中国戦線では補給も
ままならず「現地調達」がかなり行なわれているのに誠に罰当たりな話
であります。
大航海時代、生鮮野菜や果物の不足により「壊血病」になり多くの船
乗りが死にました。「壊血病は」ビタミンCの欠乏から生じます。戦時
中、旧満州でも冬になると野菜が入手出来ずビタミンC摂取の為、大豆
の「もやし」を食べさせていたようです。そしてこれでは飽きてしまう
ので毎日お茶(番茶)を飲ませるようにしたそうです。
ところで、もやしの効果は?
座右の書「最新食品標準成分表」によれば
現代の生活活動強度Ⅲ(重い)成人男子のビタミンC、1日所要量は
50㎎、大豆もやし100g当り生で8㎎、茹でた物で2㎎、もし単純
に茹でた物だけで必要量を満たそうとすれば2500gのもやしを食べ
なければなりません。ホンマカイナ。また番茶抽出液(ようはただのお
茶です。)100cc中に含まれるビタミンCも2㎎です。なお、イギ
リスの船員に用いられたライムジュースでは100g中33㎎のビタミ
ンCが含有します。
不思議なことに「かぼちゃ水煮」100g中12㎎、「石焼芋」
100g中21㎎ビタミンC含有、・・・なんで「もやし」なんだ・・・