日本海軍の脚気対策における最初の試み(実験)である明治十七年、「筑波」での遠洋航海で生徒及び下士官以下が摂った食糧を検証してみよう。
毎人一日分ノ食量表
米 百八十匁 味噌 十四匁 豆類 十二匁
魚類 四〇匁以上 醤油 十六匁 麦粉 二十匁
肉類 八十匁以上 野菜 百二十匁 茶 二匁
脂油類 四匁 酢 二匁 塩 二匁
砂糖 二十匁 香料 三分 漬物 二十匁
牛乳 十二匁 酒類 五十匁 菓物 適宜
匁=3.75g
巷間伝えられる話では米食を排し、パン食にしたとあるがどうも話が違うらしい。小麦粉75gでは最大限に見積もっても一食分のパンにしかならない。ということは主食と呼べる物は実は白米だったことが分かる。この表で特筆すべき事は肉類・魚類合わせて450g以上摂っていたことだ。実際、今日自分が摂った肉類・魚類の量を考えてみよう。450g以上食べた人間はそうはいないはずだ。カロリー量からいえば確かに米(炭水化物)摂取の方が有利なのだが、肉類、魚類に含まれる、必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン、無機塩類を忘れてはいけない。(当時は知らなかったが)さらに、カロリー量では劣るが、蛋白質や脂肪の消化では炭水化物(グルコース代謝があるため)の消化よりビタミンB1の所要量が少なくてよい。(これも当時知らなかった)また、パンのビタミンB1含有量がご飯(白米)のビタミンB1含有量に対して多いと思われているようだが、実際のところそう大きな差があるわけではない。それは現在の学校給食でパンにビタミンB1を添加していることからもわかる。