「艦爆隊長の戦訓」 阿部善郎 光人社NF文庫
「幻の最後通牒 アメリカ大使館附海軍武官補佐官の太平洋戦争」
  実松譲  1995年8月18日発行 五月書房 
を読む。
 「鶏を割くのに牛刀をもってする」真珠湾攻撃後、セイロン島攻撃までの南雲艦隊の作戦行動について、多く耳にするセリフである。ウェーク、カビエン、ラバウル、ポートダーウィン、チラチャップこれらの攻撃がお気に召さないらしく、あくまでも主敵は米主力艦隊、空母や座ったアヒル、オット失礼戦艦なのらしい。当時、紛れも無く世界最強の打撃力を誇った艦隊は、商船など歯牙にも掛けないのである。であるから、ポートダーウィンにしろチラチャップにしろコロンボ、ツリンコマリー、反復攻撃を行ない商船を徹底的に沈めるなど考えも及ばなかったのであろう。弱った犬を叩くなど帝国海軍の矜持からも許されないことなのである。(南雲艦隊がチラチャップで沈めた艦船の連合国側からの詳細な話をだれかプリンスに御教示ください。)
 2冊目の本は面白かった。ニューヨークの海軍監督官事務所が開戦前、工業ダイヤモンドを秘密購入したり、スペリー社で製作され対英援助物資として送られるスーパー・チャージャー(過給器)をカナダのハリファックスで盗んだ話は初めて聞いた。また、在米資産が凍結される前に、アメリカ大使館で90万ドルもの現金を用意していた話はとても興味深かった。大使館での開戦前後の大使館員の行動は今も変わらぬ伝統的なもので、彼らは悠久の時の流れに身を任せていたのだ。