すでに時期的には今更らしいが、先日電車男を読んだ。
電車男に関する説明はココ。
恋愛物語として考えた場合、あらすじ自体は全然つまらないのだけれど、その課程がライブで進行する様が生々しいというか、非常に距離が近くて臨場感がある。また、電車男に対してミクロなアドバイスを与え倒すスレ住人の世話焼きっぷりが、なにやら下町人情もののごとくのノリで、ハートウォーミングである、よい。
この話は掴みがいいんだよな。彼女いない歴=年齢、22歳アニオタの電車男は、ある日電車で女性に絡む酔っぱらいを制止する。それのお礼にと女性はペアカップを送ってくる。あるスレ住人が聞いた。カップのブランドは何?と。
HERMESって書いてあるけど。どこの食器メーカーだろ
この電車男のマジボケから話は大沸騰し、女性はエルメスと呼ばれるようになる。
自分的にツボだったのは、エルメス女史の萌えキャラぶりだ。まとめサイトに置いても、エルメス語録として記録されているけれど、電車男の再現するエルメス女史は、常に柔らかな笑みを絶やさず、ほんわかとして優しさのあふれるお姉さんといった印象だ。ただ、現実の女史はそれと異なるのではないだろうか。つまり、スレで語られるエルメス女史は電車男の脳内フィルタを通して、その言動にも修正が加えられていると思われる。だいたいにして、ある人間との会話を後日完璧に再現するなど不可能に近い。そこには再現者のフィルタがかかって当然なのだ。
では電車男が無意識に作り上げたエルメス女史、そのモデルとは誰なのだろう? それはスレの半ばに電車男が投下したスレ違い誤爆によって解明する。
「これ喜久子姉ぇ? 」
そう、アニオタである電車男は井上喜久子さん萌え萌えだったのだ! 試しにエルメスセリフを喜久子さん声で読んでみると…… ハマる! ていうか完璧だ! なんか読んでる最中も既視感を感じていたが、そうかそうだったのか。エルメス女史の萌えキャラは、電車男の喜久子さん萌えが創出したものだったのだ。
とは書いたものの、この話自体が電車男の創作だとは思えない。あまりにもリアルにすぎるし、創作にしては手が込みすぎているし、検証しても、ダウトと思える部分が見あたらない。
エルメス女史は中流家庭の一番上くらいの家らしく、家で飲むお茶は英国御用達超高級ブランド、ベノアティー、室内でダルメシアンを飼い、連休があったら海外へ出るのがアタリマエ。そんなエルメス女史に、自分じゃ釣り合わないとウジウジ悩み始める電車男。そんな電車にあるスレ住人が渇。
あのね、ぶっちゃけね、英語がどうとか海外がどうとか紅茶がどうとか
そう言う以前に、エルメスんちに行くとかそっちの方がよっぽど大変なんよ。
エルメスんち行きのチケットとかJTBで売ってくれない訳。
どうすれば招待してもらえるのか誰も教えてはくれない訳。
英語とか海外とかは金と暇でどうにかなるんだよ。
この発言はグッと来た。そしてこれは、2ちゃんねるならではの高品質な発言だと思う。2ちゃんねるにポストされる発言はその99%がゴミだが残りの1%には他のどこに行っても読むことのできない金言が含まれる事が多々ある。それを一度でも見て、目から鱗を落とした経験を持つ者は2ちゃんねるに対する見方を変えるのだけれど、それをなしえない者は、あいかわらずゴミダメ、人間のクズしかいないところと決めつけるのだ。
この高品質な発言を可能にしているのは、2ちゃんねるの抱える膨大な参加者である。専門家をそろえたお行儀のよいサイトなど、圧倒的な数の前には、かないはしないのだよね。
物語は電車の告白をもってハッピーエンドで終了する。しかし、読み終える前から感じたのが、これこんなに有名になっちゃったら、エルメス女史の目に触れる可能性も高いんじゃなかろうか? そんなんなったら破局じゃねえのかということ。とか思っていたら、独身男性板にそのものスレが立っていた。おそらくガセだとは思うけど、それが現実になる可能性は高いんじゃないかなあと。
電車男を完読してから、同じサイトにある他のスレも読んでみたけれど、たいていひどい終わり方してるなあ…… 特に輪ゴム 「賭け」なんてヒデーよこれ。まあでもフツーの現実はこの程度だよなあ。反面、電車男は話が出来過ぎという意見も多いけど、でもあれくらいのイベントは人生に一度くらいはあると思う。