偽装網の事を書けば、次に防潜網の事を書かなければいけないと考えるのが、軍事知識に乏しいミリタリーマニアの悲しさである。

 防潜網は敵の魚形水雷(魚雷)と潜水艦が要塞地帯へ侵入してくるのを防ぐ兵器である。上段は魚雷を防ぐ径5㎜、0.8%C(炭素)のワイヤーを使用した径1mのリングを組み合せた網であり、下段は構成「6×7、6×24」径8~10㎜の鍍金を施されたワイヤーロープを組合わせた網で、こちらは潜水艦の侵入を防ぐためのものだった。張った網はやはり当社が制作した5~150kgのブイで吊られた。別の5~10kgの軽量ブイには燐系統の火薬が挿入してあり、潜水艦が網にかかると発火発煙する仕掛けになっていた。イギリスでは「トーピードネット・アンド・サブマリンネット」といわれ、そのうちサブマリンネットはイギリスで考案されたものだった。上部のトーピードネットは海軍と当社の共同研究から生まれたもので日本の戦艦は戦闘中の敵魚雷攻撃に備えて、これを艦の周囲に垂れ下げているのが常であった。
 昭和7年川崎工場内に「海軍機雷関係兵器鍛造工場」が設置された。
製品は軍関係としては艦船艤装用ロープ(麻)、機雷係留索、掃海索、防潜網、捕獲網、阻塞気球係留索、ガン・ワイヤ(46㎝砲用も、小倉工場)、航空機用鋼索、弁バネ、機銃バネ、シンガポール浮ドック用ワイヤロープ(昭和19年製造)などだった。

 防潜網を付けて戦闘したならば抵抗が増えて速力が出ないなどとはゆめゆめ考えないで下さい。何処でどの様に作っていたか書かれてあるだけでも貴重なのです。興味のある方は図書館でお読み下さい。

引用文献
 「東京製網100年史」東京製網株式会社
  平成元年4月発行