今日の読売新聞の中に次のような記述があった。

 精米によるビタミンB₁不足が最大の原因ですが、原因究明の過程における陸海軍の脚気論争は有名です。
 海軍は高木兼寛軍医総監が「食事の欠陥で起こる」とし、食事の改善で早期の制圧に成功しました。陸軍はこれを俗説として排除。時の陸軍軍医総監の森鷗外は「すべての病気は細菌によって起こる」とのドイツの見方をよりどころに東大医学部と一緒になって、細菌説に固執しました。
  12面 「時代の証言者 医の心 井形 昭弘」

 この内容には明らかな間違いがある。陸軍の脚気対策の失敗の元凶は森鷗外の2代前の軍医総監石黒忠悳であり、森鷗外(以後森林太郎とする)が軍医総監となったのは、日露戦役後の事であり、その時には「食事の欠陥で起こる」という事が認知されていたのである。(ただし、森林太郎はその事を公式には一切認めなかったが)陸軍の脚気対策の失敗についてことさら森林太郎に言及する事が多いが、本来は軍医総監石黒忠悳個人と東大医学部を綿密に調べる必要があるのだと思う。ただ、森林太郎の間接的にせよ受動的にせよ大きな責任があった事を否定する事は出来ない。