匂いたつ例の機種

 1941年中のドイツ空軍は合計5002機の機体を登録抹消しています。戦闘での損失はその中の2849機、残り2153機は事故等での消耗です。
機種別に見ると、

Bf109
戦闘損失622機 事故等705機 1月の戦力841機に対する消耗率157.8%
Bf110
戦闘損失246機 事故等217機 1月の戦力384機に対する消耗率120.6%
Ju87
戦闘損失225機 事故等141機 1月の戦力456機に対する消耗率134.3%
爆撃機合計
戦闘損失1154機 事故等644機 1月の戦力1339機に対する消耗率134.3%

 何だか例の機種が変な具合です。事故機が多いのかな、と思ってしまいますが、ここは冷静になって、損傷機の数字を眺めます。

・部隊で修理できない損傷

Bf109
戦闘16機 戦闘以外463機
Bf110
戦闘38機 戦闘以外77機
Ju87
戦闘29機 戦闘以外56機
爆撃機
戦闘187機 戦闘以外439機

 双発以上の爆撃機の修理は部隊で手に負えないのは理解できるような気がしますが、やはり例の機種はよくわかりません。戦闘の30倍も戦闘以外で損傷するとは、戦闘で損傷した機体の殆どが帰って来れらない程に脆弱なのか、あるいは何かとんでもない事情があって次々壊れているのではないか、との考えが頭に浮かんできます。

・部隊で修理可能な損傷

Bf109
戦闘80機 戦闘以外350機
Bf110
戦闘23機 戦闘以外119機
Ju87
戦闘27機 戦闘以外74機
爆撃機
戦闘130機 戦闘以外538機

 小規模な損傷も同じような同じような傾向です。
ただ例の機種については、部隊で直せる程度の損傷は戦闘によるものがやや多く、大修理を要するような損傷の殆どは戦闘以外の理由で発生していることがわかります。 ということは、出撃して帰還するまではとりあえず無事な機体が多いということで、まさか格納庫や列線に並びながら壊れて行くことはあり得ませんから基地での離着陸時に集中的に何かが発生しているという状況が推測できます。

 このような兵器を運用していると、たとえ個々の戦闘で勝利できても先行きが暗いことは誰の目にも明らかだろうと思います。操縦者のスキル低下がまだ顕著になっていない全盛期のドイツ戦闘機隊ですらこのようなものだったので、それ以降の時期は推して知るべし、です。

5月 11, 2008 · BUN · 5 Comments
Posted in: ソ連空軍

5 Responses

  1. DDかず - 5月 14, 2008

     以前、誰だったかモータージャーナリストが「自動車は走るためにあるのではなく、駐まるために走る」とかなんとか言っていたのを思い出しました。
     まあ、これとはちょっと違うんですけど、飛行機にも当てはまるのかなぁ、なんて思いました。
     Bf109 この飛行機、空中にいる事しか考えてないのか、なんて思ってしまいます。そりゃ飛行性能は抜群ですよ。それを補佐するドイツ人得意の工夫満載デバイス類も多数。だけど、なんかそっちのほうに注力するあまり肝心な事をすっかり忘れたんじゃないかと(^^)
     He112と競った審査の日、もし離陸に失敗していたら今頃は歴史に埋もれて駄作機の列に並んでいそうで・・・

  2. ペドロ - 5月 14, 2008

    採用された頃はまだBf110のような駆逐機なんかにも夢が持てる時代でしたからね。
    それに日本基準で言えば「九五式戦闘機」に相当する機体がこれから十年使われることになるなどとは予想すらできなかったでしょう。

  3. BUN - 5月 16, 2008

    DDかずさん

    良くも悪くも突出した部分のある飛行機にはそれなりの事情がある、というこの世界の鉄則のようなものがありますね。なんでまたこんなことになったんだろう、という・・。

    ペドロさん

    そうですね。Bf110にも期待が持てた時代にはその時代なりの考え方がありますから、それが後の時代にどう変わったのか、何が変わらなかったのかが面白いところですよね。

  4. アミバ - 1月 2, 2009

    独軍パイロットのスキル低下っていつごろから見られたんですかね。この頃は大丈夫として、合成石油工場がやられる44年までは一定のスキルを保っていたんでしょうか?

  5. BUN - 1月 4, 2009

    アミバさん

    戦記ものなどを読むと「熟練パイロットが失われ・・」「錬度が低下し・・」といった言葉があまり深く考えられることなしに使われていますが、パイロットの錬度はどこの国でも「戦争を始めようとしたその瞬間から低下し始める」が本当です。大量養成が始まるからですね。日本も開戦のずっと前から錬度の低下が指摘され続けていますし、ドイツもまた変わりません。それを乗り越えるには大量養成を早く大規模に始める以外に無いのです。
    本ブログの空軍カテゴリーに「パイロットの錬度」がありますのでよろしかったらご覧ください。

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