番外編 書評「東海道線誕生」
今年は東海道線、横須賀線開通120周年ということで、それにちなんだ書籍が発売されています。その中で、中村健治「東海道線誕生」イカロス出版 はなかなか面白く、鉄道ファンならずとも読む価値のある一冊ではないかと思います。
ともすると開通120周年記念の企画本と見過ごしてしまいかねないタイトルですが、副題にある通り、「鉄道の父 井上勝の生涯」を追いながら東海道線が東海道ルートで完成するまでを史料に基づいてしっかりと説いて聞かせてくれます。
横須賀線が海上からの砲撃を避けるために山間を縫って走る要塞鉄道などではない、と言う話は本ブログでも紹介しましたが、その本線である東海道線については軍事的な理由で「陸軍が内陸ルートを主張した」ために中山道ルートが検討され、その後、軍部の反対を押し切って東海道ルートに変更されたといった認識が一般的です。本書はその辺りの誤解を解く貴重な存在だといえます。
・ 東海道ルートと中山道ルートは経営的観点から比較検討された。
・ 東海道ルートは海運と競合すると考えられた。
・ 陸軍の中山道ルート支持は中山道ルート決定後のことだった。
・ 東海道ルートへの変更に対する軍の抵抗はほとんど無かった。
・ すべては時間との戦いだった。
そう聞くと、なんだか読みたくなりますね。こんなことをちゃんと述べている本を町の本屋で買えるのですから本体価格1619円プラス消費税は安いものです。あれもこれも軍事的な視点からしか眺めない悪癖のある我々にはまたとない薬でしょう。
10月 29, 2009
· BUN · 4 Comments
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4 Responses
出沼ひさし - 10月 29, 2009
>軍事的な視点からしか眺めない悪癖
某所にも書きましたが、軍隊を組織として見たら違って見えるようになるのと一緒で、視点を変えるのって大切ですよね。
BUN - 10月 30, 2009
出沼さん
おっしゃる通りです。
多少変わってはいますが、別世界じゃないんですよね。
wittmann - 11月 4, 2009
そんなものはテッチャンにおまかせして是非とも赤城等の
欠陥説を拝聴したくお願いいたします。
BUN - 11月 8, 2009
wittmannさん
ごめんなさい。
自分に興味のある部分にしか筆が進まない性質なのです。
どの軍艦が良いの悪いの、強いの弱いの、といったテーマにはあまり魅力を感じなくなってしまいました。
また別に欠陥説を唱えている訳でもありません。
大切なのは、必要な機能が不足している、掛けた手間と予算に見合わない空母だったということだけです。
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