パットンの反則技

 前に触れたアメリカ陸軍のルイジアナ機動戦演習で部隊を指揮していたパットンは車両への燃料補給その他で苦しんでいます。後々のことを考えれば、ここで十分に苦しんで経験を積んで欲しかったのですが、そこはパットン大戦車軍団の司令官たる名将の面目躍如ともいうべき発想の柔軟さが発揮されて窮地を脱し進撃を続行します。
 どのように脱したかと言えば、民間のガソリンスタンドから給油を受け、その他の物資をかなりの高額で「現地調達」したようです。第二機甲師団の隊史はパットンの「困難は金で解決」的判断を一つの武勇伝の如く伝えていますが、審判側としては苦々しい限りだったことでしょう。「負け」の判定もむべなるかな、であります。

 あくまで想像ですが、パットンはこのルイジアナでの現地調達経験をルイジアナよりよっぽど都会なフランスでも通用すると思っていたのではないでしょうか。かつてドイツ軍機甲部隊が民間のガソリンスタンドで給油した事例もありますから、半ば本気だったのではないかと思えなくもありません。なんとも威勢の良いことです。

 この頃のアメリカ機甲師団の装備はM2A4軽戦車ですけれども、これもパットンに負けず劣らず威勢の良い戦車です。
車体両側のスポンソンに固定機銃が装備され、操縦者が曳光弾を頼りに戦闘機のように車体の向きを変えて照準する方式で、それに加えて車体前面の傾斜装甲を貫いて無線手が操作するボールマウント式機銃があり、砲手は主砲に同軸装備した機銃を射撃、戦車長はスポンソンに装備された固定機銃への弾薬補給をしながら砲塔に装備された機銃を射撃、または「ショットガンを撃つ」という極めて勇ましいものです。
 こうした機銃装備から見ても騎兵用のコンバットカーが塹壕陣地の突破作戦をあまり考えていないことがわかります。追撃戦時に敵の隊列へ向けて突進蹂躙することを主眼としたハリネズミ装備なのです。
 M4シャーマンの初期ボディに前面固定機銃装備の痕跡があるのはこうした用法の名残です。それを生み出したのがパットンを始めとするアメリカ陸軍機動戦主義者の気負いと威勢の良さではなかったか・・・といった気持にもなってきます。

6月 15, 2008 · BUN · No Comments
Posted in: タンクデストロイヤーとは?, 陸戦

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