国際空軍

 1930年代のフランス航空戦略で重要なのが「ドイツを仮想敵とする諸国空軍」との連携です。再軍備を果たしたドイツへの抑止力として特にフランスと反対側の諸国、すなわちチェコとポーランドの空軍との連携を深めてドイツにとっての東部戦線を再び構成し、ソ連軍の介入まで戦線を支えるという発想です。
 この構想はフランスへの侵攻が先行しても、チェコ、ポーランドへの侵攻が先行しても有効と考えられていたのですが、実際にはフランスが考える程に仏ソ間の軍事同盟関係は発展せず、チェコ、ポーランドへの軍事援助も思うにまかせない状況で1930年代後半を過ごしてしまいます。しかもこの構想ではパリ、ロンドンという英仏の中枢の防衛を別格として扱う姿勢が明確にありましたから、中欧諸国にとっては最初から興醒めな計画でもありました。

 史実ではチェコ併合にも無策、ポーランド侵攻にも有効な手を打てず、と、まるで無能を絵に描いたような動きをしたために、フランス空軍にこのような大構想が存在したことなど全く忘れ去られていますが、フランス空軍の軍備は確実にこの方向性をもって進められています。フランス、イギリスを中心にその他諸国空軍の爆撃機兵力の集中によって構成される抑止力がフランスの航空戦略の真髄だったのです。 自国でも不足している航空発動機や完成品の軍用機輸出が細々と続けられたのはこうした構想が存在したためでもあります。

 ですからフランス空軍にとってドーウェが説いたような「開戦劈頭の大爆撃」といった発想はあり得ません。攻められてから動く受動的戦略によって報復力としての爆撃機部隊が重視されているので、空軍の独立と戦略爆撃思想は直接結びついていた訳ではなく、その上、ドイツ深部への爆撃構想は政府中枢と陸海軍、中でも陸軍によって否定されてしまいます。かといって陸軍が空軍の独立に対して猛反対した訳でもなく、空軍が陸軍の要求する任務をこなすことを前提に空軍独立には賛成なのです。
 このあたりの歯がゆくだらしないせめぎ合いが1930年代フランス空軍史の特徴かもしれません。

4月 30, 2008 · BUN · One Comment
Posted in: フランス空軍

One Response

  1. 消印所沢 - 6月 15, 2009

     はじめまして.
     消印所沢と申します.
     唐突にメールさせていただくご無礼をお許しください.

     さて,このたび拙作サイト
    「軍事板常見問題&良レス回収機構」
    におきまして以下のQ&Aを作成する際,
    貴ページを参考にさせていただきましたので,
    報告させていただきます.
    http://mltr.ganriki.net/faq08a06.html#WW2-French-Airforce

     引用の範囲内かと存じますが,
    もし差支えがございますようでしたら,
    遠慮なくお申し出いただければ幸いに存じます.

     それでは今後ともよろしくお願い申し上げます.
     草々

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