クルスク 3
クルスク戦に臨んでソ連空軍が陣地構築に力を入れていたことは広く知られています。最近ではその優れた点や、時間をかけても十分でなかった点などが明らかになっていますが、航空基地もまたよく準備されています。
ソ連軍の航空基地群の殆どがドイツ空軍の前進基地よりもずっと後方に位置していたことは既に触れましたがソ連空軍にはドイツ空軍の航空撃滅戦に対抗するために欺瞞用の囮基地を17ヵ所も設置しています。これらの飛行場はソ連軍が本当に使用している野戦飛行場とほぼ同規模でダミー飛行機が置かれ、一日に何回か軍用機による離着陸が義務付けられています。
クルスク周辺に17ヵ所の囮基地が置かれていたことはドイツ側には最後まで察知されていないようです。幸い、クルスクでの航空撃滅戦はドイツ側にとって受動的な形で進みましたからこれらの囮基地は手間の割には効果を発揮しませんでしたが、欺瞞、分散、擬装、レーダーによる早期警戒など、東部戦線の航空奇襲攻撃は段々と難しくなって来たことがわかります。
両軍の機種構成の比較
戦闘機ではドイツ600機 ソ連1000機、
爆撃機ではドイツ1000機 ソ連670機
地上攻撃機ドイツ100機 ソ連750機
偵察機ではドイツ150機 ソ連14機
こうして機種別に比べてみるとソ連空軍が汎用爆撃機よりも専用の地上攻撃機を多く持つことの他にドイツ空軍には偵察機が多く、ソ連空軍には専用の偵察機が極めて少ないことが目立ちます。これは兵力に劣るドイツ空軍にとって敵飛行場攻撃が重視され、そのための偵察能力が求められていたことと、ソ連空軍の偵察任務の多くが単座戦闘機によって担われていたためです。
ソ連軍が単座戦闘機を偵察に多用したのは、敵地上空の偵察任務に2座以上の専用偵察機を充てても損害ばかり多いことと、戦争前半までの航空偵察が主に目視によるものだったことが主な理由です。写真偵察が広範囲に実施されるのは戦争後半からです。
ソ連空軍は単発で整備の単純な機体が多く、ドイツ空軍には整備に手間のかかる双発機が多く含まれています。しかも装備している戦闘機がドイツ空軍の「あの機種」ではありませんからクルスク直前の可動機/保有機比率は83%と報告されています。これはかなり優秀な数字です。ドイツ空軍に見られる出撃回数の減少は戦況よりも機種構成面での継戦能力が大きく響いているのでしょう。
3月 7, 2008
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