先制攻撃はあり得たか?
戦史には秘話がつきもので、1941年6月22日に発動されたバルバロッサ作戦があまりにも順調に進展してしまった理由付けとして、「ソ連軍はドイツへ向けての侵攻作戦を準備中だった。」という説があります。侵攻作戦を間近に控えていたからこそ野戦軍の主力が前方配備され、その結果、ドイツ式の機動突破作戦に有効な反撃ができなかったのだとするものです。いくつかの状況証拠やかすかな記録を元に現れた「秘話」ですが、ちょっと信じたくなる話です。
けれどもソ連地上軍がどこ何百万人配置されていようとも、そんなことは「攻勢準備」の証拠にはなりません。当時のソ連軍が大規模攻勢を間近に控えているかいないかは、一目瞭然なのです。
1941年6月現在の空軍配置と航空基地の現状を把握すればソ連軍が大規模攻勢に出る準備などまったくできていないことが判ります。むしろ1941年春からのソ連空軍は機種改変と組織改革のために事実上の休眠状態にあり、計画された新設航空基地の殆どは建設中か、あるいは概成していても通信連絡手段を欠いていて使用不能の状態にあります。
そんな状態で攻勢準備などできる訳が無いのです。1930年代以降、空軍無しで企画する攻勢はありません。
ほんの少しだけ空軍を眺めればこの「秘話」が説得力を欠くことを理解できますが、独ソ戦を地上軍の動静から眺めていると「なんとなくそれらしい」気持ちにもなってきます。
このあたりは既存の戦史資料から独ソ戦を読み取る際の勘所ではないかと思います。
3月 7, 2008
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Posted in: ソ連空軍, ソ連空軍復活の背景
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