Restoration

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/39303/

 「『比類なき』ウラジーミル・ウラジミロビッチ(・プーチン)!」と質問を始めた女性記者までいたのには驚いた。

 それ、なんて書記長?

 しかし、原油高騰で完全に息を吹き返して以来、ロシアはどんどんヤバげな方向に向かっているよねえ。一度、共産独裁体制が崩れたんだから、もうあの時代には戻りたくないと思っているのかと思えば、ロシア人ってそうでもないんだよね。逆にソ連時代を懐かしみ、当時の広大な領土の誇らしさを忘れられない人が多いと聞く。だからベラルーシ再併合だの言い出すんだろう。

 現在のロシア国内では、国家主導でスターリンの再評価が進んでいるらしい。ソ連を超大国にしたから英雄なんだと。

 結局、民主主義を享受する我々には、理解できない感覚なのかもしれない。Victoriaだと、多様性が低い状態で、民主制を導入すると、民衆はその良さを理解できず、すぐに王政に戻ってしまったりするんだけど、それみたいなもんか。思えば、ロシア人って、帝政ロシアの農奴から、共産体制に移ってるから、彼らにとって、ソ連時代というのはさほど悪い時代ではなかったのかもな。つまり民主主義バージンなのだ、21世紀になる今になっても。

 現在のロシアのスターリン主義への傾倒は、ある意味、レストレーションと呼ぶべきものなのだろうか。

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  1. 民主主義は現時点においてベストではないけれど、よりベターだとはよく聞くところ。
    現代日本の東大出身官僚は往時の士大夫ともいうべき身ながら、その Nobles Oblige なき振る舞いの数々をみるにつけ、貴族共和制の方が優れているのではないか、という気もする。
    共産主義について思うのは、21世紀に残ったのは20世紀前半の資本主義国家ではなく、同じ時代の共産主義国家でもなく、両方のいい面を取った福祉型国家であったというところで、共産主義もまた人類の幸福に寄与したけれど、彼ら自身の側からは変化できなかったのかな、と。中国はまだ判断を下せないけれど。


  2. あ。ごめ。リターンキーで書き込み完了しちゃった。

    エマニュエル・トッド「帝国以後」
    http://www.amazon.co.jp/dp/4894343320

    フランス人にとっては、ロシアの今の状況というのはそれなりに理解できるものなのか・・・?

  3. >> 「『比類なき』ウラジーミル・ウラジミロビッチ(・プーチン)!」と質問を始めた女性記者
    >> までいたのには驚いた。
    > それ、なんて書記長?

    NHK BSで朝のワールドニュースを見てると「ああ、独裁モードに突入しているなあ」というのを痛感しますよ>露
    トップニュースはプーチンが閣議で中央に座って「ああ言った」「こう言った」ですから。ニュースバリューもないような話で。

    なので、IZA!の人は、いまさらそんな露に驚いてちゃいけないと思う・・・

    むしろ今注目しておくべきなのは、「輝ける」とか「鳥が空で高くさえずる」とかそういうのがいつ付くか、ではないかと。

  4. Slipperman

    Efendiさん江

    貴族共和制のが優れてるって、それなんて銀河英雄伝説ですか。
    20世紀前半の民主主義が苛烈であったことは存していますし、それをましな方向に向ける役目も、共産主義にはあったのでしょう。でも、やっぱり独裁になりやすい政体ってダメなんですよね。そういう意味で、最も独裁になりにくい政体として民主主義はベストなんだと思います。
    中国は、もう結果が出ていると思いますが。すでに現状は、共産主義じゃないと思いますし。

    へろ江

    ロシアの今の状況というのはそれなりに理解できるのかというと、フランスって、レストレーションのオーソリティーみたいなところだから、分かるんじゃないの?

    しかし、リンク先の本の紹介の「“EU露日VSアメリカ”という新構図、“新ユーラシア時代の到来”を予言。 」ってそれ、ありえなくね?

    プーチンてやっぱ、「われらが輝ける太陽」になりたい人なんだよね。で、それが大人気と。やっぱり多様性が低いんだな。今のロシアには文化技術の発明が必要と思います。

  5. 政治問題についてはさらっと言える話でもないので、さらっと言うと誤解や不和が生じがちで、ヒンギス教授のお母さんが言うように、天気の話をしている方が平和なのですが。とりあえず。
    先進諸国はともかく、既存の社会体制が崩れた多くの国で貴族・地主に代わって新たに台頭したプチブルが自分たちに有利な法律をつくって、さらに厳しく下層階級から搾取しているのを見ることが出来ます。彼らにはかつて貴族がもっていたような領民を守るという道徳がありませんから、容赦がありません。
    人民から権利を奪うがごとき制度の逆行を称揚するわけではありませんが、現実に行われているのは見せかけです。権力の濫用を悪事とみなせば、悪事をなすときにそれを意識している人は救いがありますが、悪事を悪事と思っていない輩には救いがありません。
    先進諸国もその国々の内実を見ず民主主義を称揚し、パキスタンやタイの独裁政権を批判したりしてますが、トルコの例などを見ても、往々に発展途上国の軍人はエリートであり、小党乱立して腐敗した議会よりも適切な政治を行います。
    民主主義といえど、指導者は支配者なのです。人を支配するということは伝統的に人以上の存在、神にしか認められていないことをあえてするのですから、それなりの覚悟が必要です。民主主義においては指導者層に一般にその気概が薄く、民衆におもねりがちです。最たるは、南米諸国にみられるポピュリズム政治です。小善を生かし大善を殺すから、20世紀初頭に世界最高の潜在性を持つと称えられた国々が今の状況です。日本は著しい経済復興を達成しましたが、その影には通産省の非情な政策があったとはよく言われるところ。
    そういう意味で、民主主義の指導者層は堕落しやすく、それなら政治を専業にする「貴族」に政治を任せた方がいいのではないか、ともわたしは思うのです。もっとも、あらゆる職種で見られますが、政治家も世襲化が進んでいます。千年スパンの歴史で見れば、20世紀はちょっとした混乱期に過ぎないのかもしれません。

    p.s. 銀英伝は専制君主国家と堕落した民主国家じゃないですか。専制でなければかまわない、と言うならばヴェネツィアは完璧な貴族共和制を900年近く続けましたよ。大国向きではないけれど。

  6. 先に、民主主義の指導者層は堕落しやすい、と書いた。書いておきながら、これは実は疑わしい。わたしたち国民は安易に政治家が悪いと言う。選挙権も被選挙権も持っているのに。往々にして自分は賢いと思っており(わたしもそうです。えへ)、近頃では機会均等社会を求めて負け組みに転落し、格差社会を批判している。ニュースは購買力・視聴率のために彼らに適した情報を提供する。政治のニュースを報道する際、~が狙いと見られる、と何の根拠もない背景を説明するのだ。
    この、政治家の政治行動の背景というのが曲者で、まず一般にたいして情報を持たず、政治にも慣れ親しんでいない人々が理解できる範囲で語られる。例えば、アメリカの対イラク戦争の背景は、アメリカが言うテロとの戦争も理由の一つだろうが、「本当は」石油が狙いなのだ、いや「本当は」宗教的動機に基づくのだ、と。
    だいたい偉大な政治家の思惑などは凡庸な人間には思いもよらない。日露戦争後に日比谷焼き討ち事件を起こした日本人はそうだったろう。東欧諸国の自由化革命はどのメディアも予測していなかったように記憶している。ベルリンの壁に市民が登ったときも、プラハの春の再来を予言する報道が多かった気がする。いまにして、当時の関係者が綿密な下準備をしていたことが明らかになり驚くことになる。そもそもテレビが言ってる説明がみな正しいなら、日本政府は北朝鮮に対して何が成しうるだろう、みんな筒抜けなのに。
    だがわれわれは、それを鵜呑みにして、政治家は頭が悪い、と言うのだ。飲み屋で野球の監督を罵倒する酔っ払いと差がない。われわれのほとんど多くには、政治を批判する資格がないのだ。だが、政治を批判するだけの情報を集めて分析するだけの暇はない。専門家じゃないんだから。と、そこまで考えて民主主義は本当に機能しうるのか、と疑問に思うのだ。アテネの民主主義の時代に比べて、政治が関わる問題はあまりに多岐にわたり、また詳細である。無論、全員が政治的人間になるわけにはいかない。生物である以上、なにより食べることが優先されなければならない。
    民主主義国家の偉大な政治家にとって、もっとも邪魔な存在は因循姑息にして気位だけは高い、教養ある国民ではないだろうか。もちろん、いかなる政体下においても自分たちはつねに圧制に晒されているのではないか、と疑うのは独立した人間にとってとても大切なことだ。だが、材料不足からせっかくの疑問を愚痴に転化させないために、とりあえずその根本原理を考えてみるということから始めてはどうだろう。いきなり専門書を読まずにまず概説から、ということだ。
    だが、少なくとも日本の学校では高校まで、民主主義は素晴らしい、という前提ですべて語られるので、さらにその先の政治の根本原理を考えて、民主主義はここは素晴らしいけどここは劣る、という議論にはならない。だから、現在の民主主義のここを改善しようということにはならず、政治家が悪い、ということになる。もっとも、民主主義国家が民主主義を称揚するのは国の安定を考えれば当然である。国家の圧制から自衛するために銃を持つように、政治学も小火器程度には自前で弁えておかなければなるまい。

    長々と書いてすいませんでした。「銀英伝かよ」にちょっとむきになった。

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