Archive for 4月 22nd, 2009

嗚呼大戦艦ビスマルク

 以前より友人や善意の第三者の方から「Wikipediaのビスマルクの項で滅茶苦茶言われて居るぞ」という連絡を結構戴いていた次第。時には「あれはもう誹謗中傷に近いから、なんとかしたら?」とも言われることもあるのだが、個人的には彼処で喧嘩するのは単なる労力の無駄だと考えておりますれば、彼処に参戦する気はありません、と前置きしつつ、時折彼処絡みで御質問いただく内容の取り纏めと、若干気になったものについて回答しておこうと思った次第です。

○第二次大戦時のドイツ戦艦が「防御様式が旧式」「(バイエルン級等の)
 第一次大戦艦の延長線上にしかない」とか言う評価は、

 1975年発行のSEA WARFARE 1939-1945
 (Phoebus History of the World Wars Special:
  Donald Macyntyre/Salamander books)や、
 2002年発行のTHE WORLD’S WORST WARSHIPS
  (ANTHONY PRESTON/Conway Maritime Press)

 とかで書かれていることを含めて、海外では昔から現在まで
ドイツ戦艦に対する評価としては一般的に見られる物です。

○Wikiでは「日本で最初に否定的な記述は大塚により」と書かれているけど、
 これは完全な間違い。1990年にHJが出した「戦艦」には既に出てきています。
 (ジョン・ジョーダン著/石橋孝夫訳:
  原題はAn Illustrated Guide to Battleships and Battlecruisers:
     Salamander books:1985)

○私がドイツ戦艦の設計等に批判的な見方をする様になったのは、
 ジョーダン先生の「戦艦」を読んだあとの話。
 当時日本でのドイツ戦艦の評価は、世界の艦船の特集本で
 阿部先生が書かれていた内容が一般的だったから、
 「ええ、これ本当かな」と 思っていたけど、その後
 Garzke&Dulin jr.のBattleships枢軸国/中立国版を読んで
 「ジョーダン先生の言うことは概ね正しい」と考える様になり、
 更にその後に出たKoop&Schmolke著の
 「Battleships of the Bismarck Class」
 「Battleships of the Scharnhorst Class」(出版社は全部NIP)等を
 読んで、2000年頃には「ああこりゃ本当に駄目なんだ」と
 思う様になっていた次第。
 この結果もあり、戦鳥に出した「ある巨大戦艦の真実」や
 学研の「世界の戦艦」では、本職はドイツ戦艦については
  ジョーダン先生の評価を完全に肯定する形で記事を書いています.
  (「戦艦」の「ビスマルク」に関する評価が非常に簡潔かつ
    余りに明瞭な文章であったので、「世界の戦艦」では
   殆どそのまま使わせて戴いた程でございます)。

○「技術の断絶」による各種の問題は、「戦艦」にも簡潔に記載されているほか、
  M.J.Whitley先生が書かれている一連のドイツ水上艦解説書
 (German Captal Ships of WWII他)を読むと概ね把握出来ます。
 (機関の信頼性とかの話はKoop&Schmolkeの本にある日誌の抜粋とかを
  付き合わせると非常に良く分かります)
 これを含めて、本職がドイツ戦艦で「駄目」と書いた内容については、
 ちゃんと根拠となる資料があります。

○脚柱30で「(「ドイツ海軍全史」で)大塚が評価を代えた理由は不明」と
 書いてあるけど、本職は「巨大戦艦の真実」で一番主砲塔測距儀の
 水密が駄目・高角砲の射撃指揮所の配置が駄目とは書いたけど、
 主砲の射撃指揮装備自体が駄目って書いた記憶はないんですが…。
 
○以下今見たらすんげぇ揉めているWikiのノート絡み。

 戦鳥に出している「ある巨大戦艦の真実」は、元々BUN師匠に
 「真実日記に出した『米空母の真実』が好評だから、また何か書いて」と
 言われたのが執筆の発端。
 その頃出たNaval Historyに掲載されたビスマルクの研究記事に
 面白い内容があったので(これが文中で触れた「二次資料」の正体)、
 これと既に私の脳内で固まっていたドイツ戦艦評を組み合わせて
 作ったのがあれ。
 故に彼処でIさんが言っている「SUDOさんの論考に影響されて」
 あれを書いたという様な事実はありません。
 逆に私があれを出したので、その直後の飲み会かIRCにおいて、
 SUDOさんから「大塚さんがあんなこと書くから、俺もあれを書かないと
 イケナイじゃないか」と文句を言われた記憶があります。
 因みにSUDOさんが書いた「魚雷は大人になってから・番外編」執筆時には、
 本職より資料協力もしております。

○「巨大戦艦の真実」で、対話形式を取ったのはSUDOさんの
 「魚雷は大人になってから」が好評だと聞いたので、
 「戦鳥を見ている人はこういう感じの文章が好きなのかいな」と思ったから。
 ミリタリーとギャルゲコラボの対話形式は、それ以前に自分のところで
 「ときメモ」ネタで文章書いた経験があったから、それの延長線上として
 あれを纏めました。
 因みになんで「ときメモ」ネタだったかというと

 (1)「ときメモ」は1999年頃まで凄いメジャーなゲームだったので、
    大概の人は知っていると思った。
 (2)「ときメモ」ならWin版を自分でもプレイしていたから、あのネタで書くのは容易

 という理由によります。

 時にIさん、「ときメモ」はギャルゲ(当時の呼称は恋愛シムだっけ?)であって、
 エロゲじゃあないよ。
 
 ○学研で二回独艦関連の記事を書いたのは、「世界の戦艦」が
  歴群太平洋戦史担当の編集部、「ドイツ海軍全史」が
  歴群大西洋戦史担当の編集部より別時期に別途依頼されたからです。
  「世界の戦艦」は本来八八艦隊本であったのが主執筆者が抜けるという
  緊急事態により、急遽主執筆者となった本職が企画書を書いて
  認可を受けたもの。
  「ドイツ海軍全史」は学研側から内容指定の上で書いております。
  
   共に内容が独艦に好意的で無いのは、両記事の執筆時に資料を見て
  本職が判断した内容を書いた結果です。金ほしさに同じネタを使い廻した、
  なんてことはありませんよ。

 
 …とりあえず、これだけ。

 この件とかで何か質問がありましたら、トラックバックに書くかメールを送るなりして頂ければ幸いです。出来る範囲で回答します(メールアドレスは本職HPのトップページ下端に書いてあります)。  

  

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