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VIP翻訳チラシの裏日記

 VictoriaのMOD(有志ユーザーによるゲーム拡張の通称)に、最大級の規模でなおかつオリジナルを凌駕するクオリティを誇るものがある。その名もVIPという。

 オリジナルのVicとは、ほぼ別物のゲーム内容と言っても過言ではない、そのボリュームは膨大である。そしてその膨大なデータは当然すべて英語で書かれているため、それを全部訳しちまおうという有志によるプロジェクトがVictoria’s wikiに存在する。

 ほんで自分も、「英語が読めないから日本語でやりたい」という、いささか頼りない動機でこのプロジェクトに参加している。で、先日サルディニアに続き、イタリアのイベント訳を完遂したのだけど、まあ色々骨だった。その中の一つについて今日は話したい。

 VIPのイベントには、flavorというディレクトリに納められたものがある。これは国別に、飛行機の初飛行、初の女性飛行士、ヘリコプターその他諸々を記した、雑誌の一行知識の集大成のようなシロモノだ。ちなみに、日本のファイルを見ると、二宮忠八の名前が出てくる。

 で、このイタリアのファイルを訳していたところ、イタリア初のヘリコプターという項で、以下のような文章に出くわした。

Gaetana Crocco successfully tested a helicopter design which incorporated a means to change the pitch of the blades, thereby gaining greater control of the helicopter.

 要するに、Gaetana Croccoという人がピッチ角を可変させる方式のヘリコプターのテストに成功したというのである。しかし、イタリア人がヘリコプターの歴史に大きく名を残したなんて話は聞いたこともない。まず、Gaetana Croccoという名前をググってみる。結果、アルバムの曲名一覧が一件。ううむ、実在しない人物なのか?

 すったもんだしたあげく、イタリアのwikipediaで、croccoという名前を調べると、Gaetano Croccoというロケット工学に名を残した学者が出てきた。て、naじゃなくてnoじゃねえか! というか冷静に考えれば、Gaetanaは語尾がaで女性形だから、女性名だ。もっと早く気づけ>オレ。

 さて、このGaetano Crocco氏、月のクレーターにその名を使われるほど、ロケット工学の分野においては功績を残しており、ロケットの研究を始める前は、航空分野の研究をやっていたとのこと。どうやらイベント文に書かれた人物に相違ないようだ。

 さて、あとはこの人物が、実際にヘリコプターについて、どのような功績を残したかを調べるだけだ。しかし、調べど調べどロケットに関する功績は出てくるが、ヘリについての功績など全く出てこない。調べまくったあげく、ついにhelis.comというサイトにて、以下の記述を発見した。

1906 : Crocco ( Italy )

He suggests a cyclic control

 提案しただけかよ…  ちなみに、cyclic controlとは、回転翼のピッチ角に変化を与えることで姿勢制御をおこなう方式のことを指す。まあ、イベント文の内容と合致するやね。

 つまり、このイベントは、イタリアが世界有数の航空技術先進国になったとき、史実においてイタリア国内で、もっともヘリコプター研究に通じていたCrocco氏が、ヘリコプターの初飛行を1920年以前に成功させるという架空イベントなのだった。たかだか一行の文章を訳すのに、この始末なのだ。どうだすげえだろう。

 正直手間のかかる作業ではあれど、金にならない作業だからこそ、コスト度外視の全力で取り組めるし、仕事の精度も自分で納得するまで無制限に高めることができる。というかボランティアってそうあるべきだと思うのだよね。そしてもちろん、やり遂げたときの達成感や満足度は大きいのだ。

 蛇足だが、当方の英語力は中学一年一学期程度なれど、なんとかガッツで補ってる。誤訳もあるかもしれないけど、今は参加者が少なく、それを理由に自分からリタイアできる状況でもないのだ。これからも、暇を見つけては翻訳に関わっていく所存なのである。