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SCB27改装に関する雑記

 ちと原稿を書くのに疲れたので、気分転換に某所で話題になった話についてもそもそと書き込んでみる。

 元々エセックス級の近代化計画であるSCB27という計画は、一九四〇年代末期の空母一〇隻態勢の元に検討されたため、合計七隻だけやる予定でありました。この当時改装の対象艦は艦の状態が良く、改装予算が抑えられる艦が望ましいとされましたが、某所で述べたようにその中にフランクリンの名前があるのは、注目すべき点と言えます。
 その他の艦については、戦後稼動していた八隻については、そのうち一隻のみはSCB27改装の改装対象艦とするものの、七隻は第一線空母としての寿命が尽きるまで交替させつつ運用を続ける予定になっていました。またバンカーヒルを初めとする残りの艦は、そのままでは新型艦載機の運用が困難であることもあり、何も起こらなければそのまま海軍工廠で錆びて朽ちゆくはずでした。

 朝鮮戦争勃発後にこの情勢が変わり、ローテーションの都合から艦隊空母の勢力を十六隻に拡大する事が決定します。この際にSCB27改装の対象艦数は一九五三年までに七隻が拡大され、SCB27を実施した状態で完工する予定のオリスカニーを含めて十五隻がこの改装を受ける予定となります。この後空母勢力が二〇隻に拡大されたこともあり、さらに二隻を追加改装することも検討されますが ー これの対象艦がフランクリンとバンカーヒルだとする資料があります ー 、FY52以降新造空母の継続建造に目処が立っていたこともあり、これ以上エセックス級の改装は必要無しとされて実施には至りませんでした。
 この決定に伴い、当時第一線で運用されていた六隻のエセックス原型と、練習空母として運用されていたアンティータムもこれ以上の改装は実施しないことになりました。練習空母としてそのまま退役したアンティータムを除いた六隻のうち、三隻は後にLPHに改装されてなおも運用が継続されますが、三隻はフランクリンとバンカーヒルと共に一九五九年に航空機運用艦に転籍・退役となり、以後現役に復帰する事はありませんでした。

 なお、一九五一年になると、H8カタパルトを装備した初期のSCB27A改装艦は、カタパルトの能力問題から早期に艦載機の大型化に追随できないことが判明してしまいます(同年以降のSCB27改装が、蒸気カタパルト装備のSCB27C改装とされたのは、この理由によります)。だがこれらの艦は当時護衛空母と軽空母が充当されていた対潜空母としては有効に使用出来ると判断されたため、九隻改装されたうち七隻は再度SCB125改装を受けることになり、その後能力の陳腐化に伴って対潜空母籍に転じられますが、一九六〇年代後半まで就役を続けることになります。またSCB27A改装艦のうち、より大規模な改造に適するとされたオリスカニーはSCB27C+SCB125A改装艦が実施されて、他の六隻のSCB27C改装艦と共に攻撃空母として長く就役を続けました。その一方で、オリスカニーと同様の改装を受けるはずだったレイク・シャンプレンは、新型空母の増勢が順調で改装の必要が無くなったため、一九五七年にSCB125改装未実施のまま対潜空母に転籍され、最後まで「単軸甲板」型のエセックス級として一九六九年まで就役を続けることになります。 

 二四隻が竣工したエセックス級の中で、ただ二隻戦後に就役しなかった・改装を受けなかった艦としてフランクリンとバンカーヒルの両艦は注目されますが、状況によってはSCB27C+SCB125改装の対象になったかも知れず、改装の非対象となった理由については、当時の空母整備の情勢を良く見た上でさらに良く精査する必要がある様に思われます。またこの両艦同様に改装対象にされず、原型のまま消えていった艦が三隻あることも覚えていて良いことかも知れません。

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